ANSERA JOURNAL
港区の街
愛宕地区再開発を徹底解説|41階・約160mの高級住宅と愛宕神社周辺はどう変わる?
港区愛宕一丁目で進む「愛宕地区第一種市街地再開発事業」を公式資料から分かりやすく解説。地上41階・高さ約160mの分譲住宅、愛宕神社参道の広場、愛宕山の緑地、愛宕下通り、電線地中化、完成時期、野村不動産が手掛ける住宅の注目点まで詳しく紹介します。
虎ノ門ヒルズと愛宕グリーンヒルズの間、愛宕神社の「出世の石段」のすぐ下で、大規模な再開発が進んでいます。
「愛宕地区第一種市街地再開発事業」です。目を引くのは、地上41階・地下2階、高さ約160mの超高層棟。住宅を中心に、事務所や店舗も入る計画で、2025年2月には建築工事が始まりました。高層棟のほか、参道を挟んだ反対側には3階建ての低層棟が2棟整備されます。
ただ、港区が公開している22ページの設計資料を読んでいくと、この計画の面白さは「愛宕に新しいタワーマンションができる」というところだけではありません。
愛宕神社へ向かう参道。その両側につくられる広場。愛宕山の緑を街側へつなぐ緑地。愛宕下通りの拡幅、歩行者空間、斜面や擁壁の安全対策、さらには周辺道路の電線類地中化まで含まれています。
完成後に大きく変わるのは、41階の建物そのものよりも、その足元に広がる街の風景なのかもしれません。
| 項目 | 計画内容 |
|---|---|
| 事業名 | 愛宕地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 港区愛宕一丁目の一部 |
| 施行区域 | 約0.6ha |
| 施行者 | 独立行政法人都市再生機構(UR都市機構) |
| 1街区 | 地上41階・地下2階 |
| 高さ | 約160m |
| 1街区延床面積 | 約54,200㎡ |
| 主な用途 | 住宅・事務所・店舗 |
| 2-1棟 | 地上3階・約15m/店舗等 |
| 2-2棟 | 地上3階・約10m/寺院等 |
| 建築工事着工 | 2025年2月 |
| 超高層棟竣工予定 | 2028年11月予定 |
| 事業全体 | 港区最新資料では2032年度工事完了予定 |
港区の最新資料では、高層棟側を1街区、低層棟側を2街区としています。
1街区の敷地面積は約2,900㎡、2街区は約790㎡です。
場所は「出世の石段」のすぐ下

再開発区域は愛宕山の東側、愛宕下通り沿い。愛宕神社の正面参道に接する場所です。
計画地は愛宕一丁目。東側を愛宕下通り、西側を愛宕山、南側を特別区道第812号線に囲まれています。
東京メトロでは虎ノ門駅、虎ノ門ヒルズ駅、神谷町駅に近いエリアです。
地図だけでは普通の都心再開発に見えますが、現地に行くと位置関係はかなり印象的です。
愛宕神社の大鳥居があり、その先に有名な「出世の石段」があります。今回の再開発区域は、その大鳥居の左右です。
URもこの場所を「出世の石段の下、大鳥居の左右に広がるエリア」と紹介しています。
港区の大型再開発で、神社の正面参道とここまで直接関わる案件はそう多くありません。
400年以上の歴史が残る場所で、なぜ再開発するのか

現在の愛宕神社参道。大鳥居の左右が今回の再開発区域です。
愛宕を歩くと、虎ノ門とは少し空気が変わります。
周囲には高層オフィスや虎ノ門ヒルズが並んでいるのに、愛宕山へ入ると木々が残り、その山頂には愛宕神社があります。
愛宕山周辺で守られてきた緑や歴史的な環境を残しながら、斜面の安全性を高めること。愛宕下通りを整備し、歩行者が歩きやすい空間をつくること。沿道に新しい賑わいを生み出すこと。
港区が挙げている課題は、建物の老朽化だけではありません。山、道路、参道、景観を一体でどう扱うかが、この再開発の出発点になっています。
新しい街をゼロからつくるというより、昔からそこにあるものを残しながら、周囲を今の東京に合う形へ更新していく。愛宕地区は、そういう再開発です。
41階の高層棟と、3階建ての低層2棟

参道の片側に41階の高層棟、反対側には高さを抑えた2棟の低層建物が配置されます。
建物の配置を見ると、この計画が何を大切にしているのかがよく分かります。
1街区には、地上41階・地下2階、高さ約160mの超高層棟。
2街区には、地上3階・約15mの店舗棟と、地上3階・約10mの寺院棟が配置されます。
同じ再開発区域の中で、160mと10〜15m。
かなり大きな高低差です。
これは偶然ではありません。
港区の設計資料には、高層建物を1街区にまとめることで2街区の建物ボリュームを抑え、愛宕山への眺望と山頂空間の開放性を確保すると明記されています。
参道の両側を巨大な建物で挟むのではなく、高層棟は片側へ寄せる。反対側は低くする。
愛宕神社へ向かったときに、山や空が建物で埋まらないようにしているわけです。
参道の両側に、人が立ち止まれる広場ができる

愛宕神社へ向かう参道沿いに広場が整備され、低層部には店舗などの賑わい機能も配置されます。
この再開発で、一般の人が最も変化を感じそうなのが参道です。
計画では、参道に面してまとまりのある広場を整備し、広場や愛宕下通りに面する低層部分には店舗などを配置します。広場は居住者だけのものではなく、就業者や来訪者が滞在できる空間として計画されています。
現在は愛宕下通りから大鳥居へ向かい、そのまま「出世の石段」へ進む流れですが、完成後はその途中に少し立ち止まれる場所が生まれます。
愛宕下通りから参道へ入り、広場を抜け、大鳥居をくぐって石段へ。
神社へ向かう一連の動線そのものが、今より街の正面として強調されることになります。
URはこの空間について、人が気軽に集まれる「ハレの空間」を目指したいと説明しています。
高層棟のエントランスを豪華にするだけではなく、神社へ向かう道そのものを街の主役にする。ここは、この計画らしさが最も出ている部分です。
愛宕山の緑を街までつなげる
愛宕山側には、歩行機能を持つ新しい緑地も整備されます。
これも単に植栽を増やすという話ではありません。
港区は、愛宕山に残る既存の緑と新しい広場を連続させ、生物多様性にも配慮しながら、愛宕山の緑を都市側へ広げる方針を示しています。
愛宕山の中だけに緑があるのではなく、その緑が敷地の中へ下りてきて、参道や広場、愛宕下通り側へつながっていく。
完成後に目指しているのは、そんな景観です。
虎ノ門周辺では大型再開発によって新しい緑地が増えていますが、愛宕の場合は、もともとある自然地形を起点にしているところが少し違います。
愛宕下通りも一緒に整備される

愛宕下通りの拡幅、歩道状空地、斜面整備、電線類地中化など、建物の外側にも広く手が入ります。
高層棟の東側を走る愛宕下通りも、今のままではありません。
再開発区域に接する部分では、愛宕下通りを全幅員30mとする拡幅整備が計画されています。整備対象は約110mです。
建物側には歩道と一体で使える「歩道状空地」を設け、安全で歩きやすい空間をつくります。
さらに再開発区域の外でも、愛宕山斜面の補強、既存擁壁の補強、公園内の歩行者空間整備、参道の舗装整備が予定されています。
愛宕隧道西側から桜田通りまでの一部区間や参道、愛宕山内の道路では、電線類の地中化も計画されています。
完成予想図ではどうしても建物が目立ちますが、実際に住む人や近くで働く人にとっては、歩道が広がることや、電線が減ること、山の周囲が歩きやすくなることの方が日常では実感しやすいかもしれません。
歴史を残すのに、なぜ160mのタワーを建てるのか
「愛宕山や神社を守りたいなら、そもそも高層建築を建てない方がいいのでは」と感じる人もいると思います。
この計画では、建物を低く広げるのではなく、必要な床面積を1か所に高く積み上げる考え方を採っています。
高層棟を1街区にまとめることで、参道の反対側は低層にできる。
その間に広場をつくれる。
愛宕山側には緑地を残せる。
設計資料を見ると、建物の高さだけではなく、地上にどれだけ余白を残すかまで含めて計画されていることが分かります。
近くの愛宕グリーンヒルズも、建物を集約・高層化することでオープンスペースを生み出し、愛宕山の緑や歴史的な寺院と超高層建築を共存させたプロジェクトです。今回の再開発にも、考え方として通じる部分があります。
新しい住宅はどんなマンションになる?

建物の大部分を分譲住宅として販売する計画
正式なマンション名称、販売戸数、間取り、価格、販売開始時期は、2026年9月時点ではまだ公表されていません。
ここは想像で埋めない方がいいところです。
ただし、住宅の方向性まではかなり見えてきています。
URは41階の高層棟について、低層部にオフィスを配置し、建物の大部分を分譲住宅として販売する計画だと紹介しています。
また野村不動産は、愛宕地区を含む都心プロジェクトについて、最上級クラスの商品企画と専属販売体制を用いた高額分譲マンションの供給を拡大する方針を発表しています。愛宕地区はその代表案件の一つとして名前が挙げられています。
少なくとも、
「都心の一般的なファミリーマンションをつくる案件ではない」
というところまでは読み取れます。
一方で、正式ブランドが「PROUD」になるのか、それとも別の商品展開になるのかはまだ分かりません。販売情報が出るまでは、名前も価格も断定しない方が正確です。
愛宕の住宅が少し特別な理由
愛宕は、港区の中でも少し説明しにくい場所です。
麻布のように住宅街が広く続いているわけではなく、虎ノ門のようにオフィス中心でもありません。
周辺には虎ノ門ヒルズがあり、南西方向には麻布台ヒルズ。
その間に、愛宕山と愛宕神社があります。
既存の愛宕グリーンヒルズには、総戸数353戸の高級賃貸住宅愛宕グリーンヒルズフォレストタワーもあります。森ビルは同プロジェクトについて、住宅・オフィスとも高稼働率で、都内最高水準の賃料を維持しているとしています。
住宅として見た愛宕の特徴は、虎ノ門のビジネス利便性と、愛宕山の静けさがほとんど同じ場所にあることです。
都心の新築マンションで「緑が多い」と言っても、多くは新しく整備された庭や公開空地です。
愛宕の場合は、その隣に400年以上の歴史を持つ神社と、もともとの山があります。
この違いをどう評価するかで、物件の見え方はかなり変わりそうです。
新旧2つのタワーが近接|眺望には注意したい
一方で、眺望については少し注意しておきたい点があります。
新しく建つ高層棟のすぐ南側には、愛宕グリーンヒルズフォレストタワーがあります。
新高層棟は約160m、フォレストタワーも約157mと、ほぼ同じ高さです。
そのため、フォレストタワーの北向き住戸では、新しい高層棟が視界に入る可能性があります。
反対に、新高層棟の南向き住戸でも、フォレストタワーが正面または斜め前に見える住戸が出てきそうです。
特に注意したいのは、「高層階だから抜ける」「南向きだから眺望が良い」とは限らないことです。
実際の見え方は、階数だけでなく、建物同士の距離や角度、住戸の位置によってかなり変わります。
新築の販売が始まった際には、価格や間取りだけでなく、フォレストタワーとの位置関係まで確認したいポイントです。
既存のフォレストタワーについても、北向き住戸を検討する場合は、再開発後の眺望を前提に見た方がよいでしょう。
虎ノ門ヒルズと麻布台ヒルズの間で起きていること

愛宕地区は、虎ノ門ヒルズと麻布台ヒルズの間に位置し、周辺ではオフィス・住宅・ホテル・商業・緑地の更新が続いています。
愛宕地区だけを切り取るより、少し広い範囲で見る方がこの再開発の意味は分かりやすいです。
北東には虎ノ門ヒルズ。
南西には麻布台ヒルズ。
その間に、愛宕山、愛宕グリーンヒルズ、そして今回の愛宕地区再開発があります。
規模だけを比べれば、虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズの方が圧倒的に大きいです。
ただ、今回の計画は、そうした大型再開発の間に残る**「愛宕山の麓」**を更新するプロジェクトです。
オフィスやホテル、商業施設だけではなく、神社や寺院、緑、高級住宅まで徒歩圏に混在する。
港区の中でも、かなり独特な生活圏になりつつあります。
完成は2028年?2032年?
愛宕地区再開発を調べると、完成時期について複数の数字が出てきます。
URの公表では、41階の超高層棟は2028年11月竣工予定です。
一方、港区が2025年10月に更新した最新ページでは、再開発事業全体の工事完了を2032年度予定としています。
この2つは対象が違います。
2028年は高層棟。
2032年度は低層街区や周辺整備まで含めた事業全体です。
なお、URの過去の記事には「最終的な完成予定は2031年」という記載も残っています。スケジュールはその後更新されたとみられるため、この記事では港区の最新公表である2032年度を事業全体の完成時期として採用しています。
マンションそのものを見ている人なら、まず2028年。
参道や低層棟、周辺の街路まで含めて完成した姿を見るなら、その先まで待つことになります。
販売情報が出たら確認したいところ
新しいマンションの評価は、正式な商品情報が出てから大きく変わる可能性があります。
特に見たいのは、住戸面積です。100㎡超、150㎡超といった大型住戸がどれだけ用意されるのかで、狙う顧客層はかなり変わります。
次に眺望。東京タワー、虎ノ門ヒルズ、愛宕山など、方角と階数によって住戸価値に大きな差が出る可能性があります。
高額物件なので、駐車場も外せません。平置き区画、ハイルーフ対応、車両サイズ、専用使用権などは、購入判断に直結します。
共用施設についても同様です。ラウンジ、フィットネス、スパ、コンシェルジュなど、野村不動産が「最上級クラス」としてどこまで商品をつくり込むのか。
そして最後は価格です。
虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズの住宅とどの程度の価格差をつけてくるのかによって、愛宕という場所の新しい市場評価も見えてくるはずです。
Anseraが見ているのは「何戸売り出すか」より、愛宕のポジション
不動産市場の視点では、今回の再開発で最も気になるのは供給戸数ではありません。
愛宕という、新築分譲住宅が頻繁に出てこない場所に、最上級クラスを意識した大型分譲住宅が登場すること。
こちらの方が重要です。
同じ港区の100㎡でも、麻布を選ぶ人、六本木を選ぶ人、虎ノ門を選ぶ人、青山を選ぶ人では、住宅に求めるものが少しずつ違います。
愛宕を選ぶ理由になるとすれば、派手さよりも、
都心の中心にいながら、山・神社・緑のすぐそばに住めること。
そのうえで虎ノ門のビジネス街へ歩けることです。
経営者や役員、外資系企業のエグゼクティブ、都心にセカンドハウスを求める層などには、かなり相性のいい立地になりそうです。
もちろん、これは現時点での市場面からの見方です。
実際の商品性は、間取り、駐車場、共用施設、眺望、そして価格が発表されてから判断する必要があります。
愛宕地区再開発で変わるのは、タワーより「その足元」
愛宕地区再開発という名前を見ると、どうしても「41階・約160m」という数字が目立ちます。
でも、公式資料を読んでいて印象に残るのは別のところです。
高層棟を片側へまとめ、反対側は低層にする。
大鳥居の前に広場をつくる。
愛宕山の緑を街へつなぐ。
歩道を整え、斜面や擁壁を補強する。
電線を地下へ移す。
昔からある愛宕神社や愛宕山を消して新しい街にするのではなく、残したいものを残したまま、周りをつくり直す。
この計画は、そう考えると理解しやすいです。
虎ノ門ヒルズと麻布台ヒルズに挟まれた愛宕山の麓が、この先どんな姿になるのか。
そして、その場所に生まれる新しい分譲住宅が、港区の高級住宅市場でどんな位置を占めるのか。
マンションの正式名称や販売価格、間取りなどが発表されれば、また見え方は変わります。
Anseraでも新しい情報が確認でき次第、この記事を更新していきます。
