ANSERA JOURNAL
港区の街
六本木五丁目西地区再開発が次の段階へ|327m・70階住宅・ローズウッド東京、2032年の六本木はどう変わるか
六本木五丁目西地区再開発の最新計画を、327mの複合棟、70階住宅、ローズウッド東京、2032年度竣工予定と周辺不動産への影響から解説します。
次の段階へ
2032年、六本木と麻布十番はどう変わるか
六本木五丁目西地区の高さ比較イメージ
六本木交差点から芋洗坂、鳥居坂、けやき坂、麻布十番へと続く一帯で進む「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」が、次の手続きへ進みました。2026年9月2日の港区議会・建設常任委員会では、六本木五丁目西地区地区計画の変更(原案)が報告されています。
この再開発は、高さ327m・地上66階のA-1街区だけが注目されがちですが、実際にはそれだけではありません。地上70階・高さ288mの大規模住宅棟、東京初進出となる「ローズウッド東京」、MICE・文化・エンターテインメント機能、六本木駅の交通結節機能、麻布十番方面への歩行者ネットワーク、学校・文化施設の再編まで含む、六本木という街の構造そのものを組み替えるプロジェクトです。
本記事では、9月2日の最新資料だけでなく、港区の7月29日資料、東京都の都市計画・環境アセスメント、森ビル・住友不動産、ローズウッド、国際文化会館、東洋英和女学院、都心高級マンション市場の最新統計まで横断し、「何が新しく動いたのか」「2032年に六本木はどう変わるのか」「周辺不動産に何が起き得るのか」を整理します。
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
- 9月2日、港区議会でF・G地区を含む地区計画変更の原案が報告された。
- 第一種市街地再開発事業の施行区域は約9.2ha。地区計画全体は最新資料で約10.5ha。
- A-1街区は327m・地上66階・延べ約79.45万㎡。最上層部に「ローズウッド東京」約200室。
- B街区は288m・地上70階・延べ約23.91万㎡で、共同住宅が中核。住宅戸数は現時点で公式に未定。
- 最新公式スケジュールは2027年度に再開発着工、2032年度に再開発竣工予定。
- 不動産への影響は「再開発=全物件値上がり」ではなく、新規高級住宅供給・街のブランド上昇・回遊性向上・工事中の負荷を分けて見る必要がある。
1. 9月2日に何が変わったのか——「着工」ではなく、街区をつなぐ計画が具体化
まず正確に整理すると、今回のニュースは「再開発工事が始まった」という話ではありません。港区議会で報告されたのは地区計画変更の原案です。2024年4月にA〜E地区を中心とする都市計画が決定済みで、2026年度は隣接するF・G地区を含めた地区計画の変更を進める段階に入っています。
重要なのは、F・G地区が単なる「追加の建物」ではなく、六本木駅側、六本木ヒルズ側、麻布十番側をつなぐ結節点として位置付けられていることです。港区の資料では、けやき坂下交差点の四つ角をつなぎ、回遊性・文化・エンターテインメント・情報発信を一体化する方針が示されています。
7月29日の資料では、F・G地区の整備にテレビ朝日の機能を活用する考え方も明示されました。テレビ局の制作・情報発信力を生かした防災情報、多言語でのMICE情報発信、デジタル技術を使った双方向の情報コミュニケーション、文化・エンターテインメント機能などが想定されています。
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
不動産の視点でここが重要です。大規模再開発の価値は「新しいタワーが建つ」だけでは決まりません。六本木駅から麻布十番、六本木ヒルズ、鳥居坂方面へ人がどう流れるかが変われば、商業の強さ、夜間人口、賃貸需要、街の歩きやすさまで変わります。今回のF・G地区は、その“つなぎ目”を具体化する計画です。
2. 規模は麻布台ヒルズを上回る——ただし比較方法には注意
東京都の環境アセスメントでは、六本木五丁目西地区の第一種市街地再開発事業は区域約9.2ha、延床約108万㎡。A-1街区だけで約79.45万㎡、B街区は約23.91万㎡あります。
比較すると、森ビル公表値で麻布台ヒルズは区域約8.1ha・延床約86.17万㎡、六本木ヒルズは開業時点で区域約11.6ha・延床約75.91万㎡です。延床面積という一つの指標だけで見れば、六本木五丁目西地区の第一種再開発は両者を上回る規模になります。
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
六本木五丁目西地区と麻布台ヒルズ、六本木ヒルズの延床面積比較
ただし「六本木五丁目西地区=麻布台ヒルズより25%大きい」と単純に言い切るのは正確ではありません。施行区域、地区計画区域、既存保存施設の扱いなど計算範囲が異なるためです。規模の大きさは確かですが、数字は同じ定義で比較する必要があります。
3. A-1街区:327mのメインタワーは「オフィス+超高級ホテル+MICE」の核
A-1街区は、敷地約38,600㎡、延床約794,500㎡、地上66階・地下8階、高さ327m。主要用途は事務所、ホテル、店舗、駐車場などです。高さだけでなく、1棟の延床面積そのものが非常に大きい点が特徴です。
2026年5月には、森ビルと住友不動産がホテル運営会社としてRosewood(ローズウッド)を選定。東京初の「ローズウッド東京」は、約330mのメインタワー最上層部に入り、約200室、複数レストラン、宴会場、スパなどを備える計画です。Rosewood自身も、東京で初、かつ日本初の都市型Rosewoodとして位置付けています。
さらに森ビル・住友不動産の発表では、ホテル眼下に約16,000㎡の人工地盤上の「都心の森」を整備。港区資料では緑地2号約10,000㎡、緑地1号約6,700㎡など、大規模なオープンスペースを複数配置する計画が示されています。
ここは不動産価値を考えるうえで重要です。ローズウッドの導入は単なるホテルテナントの決定ではなく、六本木五丁目の客層を世界のウルトララグジュアリー層へ引き上げる装置になり得ます。ホテル、MICE、イベント、オフィス、住宅が一体化すれば、周辺の高級賃貸・サービス需要・法人需要にも波及する可能性があります。
4. B街区:不動産市場に最も直接効くのは「70階・288mの住宅棟」
不動産仲介の視点で最も注目すべきなのはB街区です。敷地約14,400㎡、延床約239,100㎡、地上70階・地下5階、高さ288m。主要用途は共同住宅、店舗、事務所、駐車場です。
この住宅棟が完成すれば、六本木ヒルズレジデンス、麻布台ヒルズの住宅群、虎ノ門・赤坂の超高級住宅に並ぶ、新たな大型供給になります。したがって周辺中古マンションにとっては、街のブランド向上というプラスだけでなく、高額帯の新築競合が一気に増えるというマイナスも無視できません。
特に、同じ「六本木・麻布十番」「タワー」「外国人対応」「高層階」「ホテルライク」という属性で競合する既存住宅は、2032年が近づくほど、眺望、専有面積、駐車場、共用施設、管理品質、築年数といった差がより明確に比較されるでしょう。
5. F・G地区:今回の変更で見逃せない「文化・テレビ・ナイトタイム」の機能
今回の地区計画変更で詳しく見るべきなのがF・G地区です。F地区について、最新の港区資料では敷地約2,030㎡、延床約12,565㎡、地上10階・地下3階、基準点からGL+60m、用途は事務所、ホール、商業等とされています。
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
7月資料では、地区内の新規MICE・文化施設として約2,000人規模の大型多目的ホールなどが整理され、F地区では着席約500席の多目的ホールを想定。eスポーツ、音楽・演劇、イベント、配信、企業研修などに対応する考え方が示されています。
また、テレビ朝日本社や周辺施設との連携、交差点での情報発信、多言語案内、ナイトタイムエコノミー、メタバースとリアル空間の連動まで記載されています。つまりF・G地区は「再開発の余白」ではなく、六本木の文化・メディア・エンターテインメントの入口を担う計画です。
麻布十番側から見ると、この変更は大きいです。芋洗坂、けやき坂、六本木交差点周辺の歩行者回遊が改善すれば、六本木ヒルズと麻布十番の間にある“心理的な距離”が縮まり、店舗・飲食・高級賃貸の商圏がより連続する可能性があります。
6. 学校と文化施設も残る——「全部壊してタワーにする」再開発ではない
この地区が他の大規模再開発と異なる点の一つが、教育・宗教・文化施設を地区の中に残しながら更新することです。C街区には学校機能が位置付けられ、東洋英和女学院小学部・幼稚園は大規模工事期間中、2027年度以降に元麻布一丁目の仮校舎へ一時移転する計画を公表しています。
また国際文化会館は、本館と庭園を歴史的資源として維持・保存しつつ、西館・別館の一部を再編し、新西館を整備する方針です。A-2街区は寺院、A-3街区は教会として位置付けられています。
これは街の資産価値にとって軽視できません。高級住宅地の価値は、新築タワーの高さだけでなく、教育、文化、緑、歴史性が日常生活の中で共存しているかでも決まるからです。六本木五丁目西地区は、六本木を「夜の街」だけではない国際文化住宅地へ再編集する意図が強い計画と読めます。
7. スケジュール:現在は2027年度着工、2032年度竣工予定
ここも古い記事との違いです。以前は2030年度完成として紹介されるケースが多くありましたが、2026年9月2日の港区公式資料では、再開発全体の竣工予定は2032年度とされています。
出典:港区議会 建設常任委員会 2026年9月2日 資料No.13より
したがって「もうすぐ完成する再開発」ではありません。むしろ不動産の実務では、2027〜2032年の工事期間と、2032年以降の完成効果を分けて考える必要があります。工事中は騒音、工事車両、景観変化、店舗動線の変化などが一時的なマイナスになる可能性があります。
8. 六本木・麻布十番の不動産価格は上がるのか——Anseraは「一律上昇」とは見ない
大型再開発が発表されると、「周辺マンション価格は上がる」と単純化されがちです。しかし、今回の六本木五丁目西地区では、プラスとマイナスが同時に発生します。
| 要因 | プラス | 注意点 |
|---|---|---|
| 街ブランド | Rosewood、MICE、文化、緑地で国際性が強化。 | 完成まで時間が長い。 |
| 交通・回遊 | 六本木駅〜けやき坂〜麻布十番の動線改善。 | 工事中は逆に動線悪化の可能性。 |
| 住宅供給 | 超高級住宅市場の厚みが増す。 | 70階住宅棟が既存高級住宅の強い競合になる。 |
| 外国人需要 | 国際水準住宅・ホテル・MICEで外資・富裕層需要を呼び込みやすい。 | 為替・規制・世界経済に左右される。 |
実際、三井不動産リアルティが2026年8月に公表した都心プレミアムマンション市場では、全体の取引件数は4四半期連続で減少し、在庫は8四半期連続で増加しています。一方で、「六本木・赤坂・虎ノ門」「麻布・麻布十番・三田」では当四半期の平均成約価格が上昇しています。
つまり、現在の高級市場は「全部上がっている」のではなく、市場全体は選別色が強まる一方、六本木・麻布など一部の超都心は強いという状態です。六本木五丁目西地区の効果も、ブランドの弱い物件を自動的に押し上げるのではなく、より「強い物件と弱い物件の差」を広げる可能性があります。
9. 既存物件で見るべきポイント——2032年に評価される住宅とは
周辺で住宅を購入・保有する場合、Anseraでは特に次の5点を見ます。
- 新住宅棟と競合しない希少性があるか
大型住戸、低層の落ち着き、永久眺望、ヴィンテージ性など、70階タワーと違う価値が必要です。 - 六本木駅・麻布十番への新しい歩行動線の恩恵を受けるか
徒歩分数だけでなく、坂・段差・夜間の歩きやすさが改善するかを見ます。 - 工事期間中のデメリットを許容できるか
2027〜2032年は完成効果だけでなく、工事音・工事車両・視界変化を考える必要があります。 - 外国人・法人賃貸に耐える商品性があるか
駐車場、セキュリティ、英語対応、家具配置、100㎡前後以上の住戸は引き続き重要です。 - 2032年に売るのか、2032年以降まで持つのか
出口時期で評価が変わります。完成直前は期待が価格に織り込まれている可能性もあります。
10. 誤解しやすい3点——他の記事を読むときの注意
通称的に使われていますが、正式名称は「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」です。
B街区の70階住宅棟は確定していますが、東京都公式ページは住宅戸数を「未定」としています。
2026年9月2日の港区資料では、再開発全体は2032年度竣工予定です。
Anseraの見解:六本木の価値は「点」から「面」へ
六本木五丁目西地区の最大の意味は、327mの超高層ビルが増えることだけではありません。六本木ヒルズ、麻布台ヒルズ、麻布十番、鳥居坂、六本木駅周辺という、これまで少しずつ分断されていた高級住宅・商業・文化エリアが、歩行者動線と都市機能によってつながることです。
2032年までに新規高級住宅の供給は増えます。そのため既存物件にとって競争は厳しくなります。しかし同時に、ローズウッド、MICE、文化施設、学校、緑地、交通結節機能によって、六本木・麻布十番エリア全体の「街としての完成度」が上がる可能性があります。
したがって今後の物件選びでは、単純に「再開発の近くを買う」では不十分です。完成後の街で、その物件が何で選ばれるのかまで考える必要があります。眺望なのか、広さなのか、低層の静けさなのか、駅アクセスなのか、建物ブランドなのか。六本木五丁目西地区は、港区の高級住宅市場を押し上げるだけでなく、物件の選別をさらに厳しくする再開発になるとAnseraは見ています。
「巨大タワーの建設」ではなく、
六本木・麻布十番の都市構造を組み替えるプロジェクトです。
主な参考資料
- 港区議会 2026年9月2日「六本木五丁目西地区地区計画の変更(原案)」
- 港区議会 2026年7月29日「六本木五丁目西地区の街づくりについて」
- 東京都都市整備局「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」
- 東京都環境局 環境アセスメント
- 森ビル・住友不動産「ローズウッド東京」発表
- Rosewood Tokyo 公式ページ
- 国際文化会館 再編計画
- 東洋英和女学院小学部 校舎建築プロジェクト
- 三井不動産リアルティ「都心プレミアムマンション市場 2026年度1Q」
※本記事は2026年9月7日時点で確認可能な公開情報を基に作成しています。都市計画、施設用途、事業スケジュール等は今後変更される可能性があります。また、周辺不動産価格への影響に関する記述にはAnseraの分析・見解を含み、特定の物件の値上がりを保証するものではありません。
